間質性膀胱炎コラム

間質性膀胱炎専門医として、患者さんを診察して思ったことや、皆様に知っていただきたいこと、お困りの患者さんに有益なことを掲載してまいります。

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自己水圧療法についての注意

自己水圧療法を行われている患者さんがおられますので、注意します。

患者さんの中には、折角水圧で拡張した膀胱がちぢんで行くことを心配されるあまり、排尿を極端に控え、出来るだけ尿をためようとしている方がいらっしゃいます。
我慢をしすぎますと、膀胱が拡がり血管が圧迫され、血流が悪くなり組織に栄養や酸素が行きにくくなってしまうため、逆に膀胱にはよくありません。
折角頑張って我慢をしても、痛みや不快感などの症状が出てきてしまいます。
自己水圧療法は控えた方がよいと思います。

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尿が出ない、出にくいのも間質性膀胱炎の特徴

ある患者さんは尿が出なくなり、管を入れられました。
出来るだけ早く取らなければ膀胱がどんどん萎縮してしまし、使い物にならなくなってしまいます。
原則的にはその場で導尿処置だけを行い、管を入れておく必要はありません。

間質性膀胱炎は尿が出にくいことが特徴で、尿が出なくなることもたまにあることです。

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アルコールの摂取について

忘年会や新年会などで暴飲暴食をした人が、胃や肝障害でしばらくアルコールを断ったところ、痛みが消えたとの報告を受けました。、
その患者さんは、確かに飲みすぎはよくないと身をもって実感されたそうです。

お酒も過ぎなければよい人もおれらます。
飲酒をされる方は、飲み過ぎないよう、ご自分の適量を見つけてください。

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女性ホルモンと痛みの関係

ある女性が更年期のため女性ホルモン補充療法を受けると痛くなり、止めるとよくなるということでした。生理前や排卵期に症状が悪化するのはホルモンのためよりも、血流が原因と考えています。 


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心の変化が要因になることがある

私は時々近所を30分くらい走っています。
このとき感じることは、青空が出ていて気分がよければ、疲れが軽減し走れるということです。
しかし例え天気がよくても、気持ちが重いと疲れがいつもより出てしまい、普段走っている距離が走れなかったり疲れが増したりします。
いつもやりなれているこのような些細なことでも、精神や気持ちの変化に影響を受けるのです。

間質性膀胱炎では膀胱が炎症して敏感な状態の時、気持ちの変化が膀胱の症状に現れることがあります。
例えば、自分の大事にしているペットや身内の不幸が起きた時などです。
症状が悪化したとき、このようなことがなかったか振り返って、思い当たることがあれば原因がわかり納得ができます。
痛みに対する不安が解消され、元のストレスが解決されないまでも、わからずに不安なときと比べて症状は楽になることでしょう。

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よく認められる不思議な現象

間質性膀胱炎が改善してきますと、よく認められる不思議な現象が患者さんに出ることがあります。
それはショック臓器の交代現象といわれるものです。
(アレルギー性疾患ではアレルギーマーチといわれ、下痢やアトピー、喘息などといった症状が見られるといった、よくある現象です。)
膀胱の症状が改善してきますと、膀胱以外の皮膚に発疹やかゆみがでたり、喉がイガイガした咳が出ることがよくあります。
さらに胃がむかむかしたり、呼吸が苦しくなったり、頭痛や腸の症状も合併して発症することがよくあります。
この時肝臓は悪くなく、喉の炎症なども見られません。
腸の下痢症状は膀胱と平行していることが多いと思いますが、いずれの症状も移動しているうちに改善していきますので、かゆみ止めや咳止めのような対症療法を行って、余り心配しないようにして下さい。

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膀胱をいたわることも大切です

『痛みがあるときに排尿をすると症状が楽になるので、尿意がなくても排尿をしていた』という患者さんが急患でいらっしゃいました。
患者さん曰く、楽になりたい一心で排尿行為を繰り返すたびに更なる痛みが襲ってきて、とうとううずくまるほどの激痛になってしまったというのです。

排尿のタイミングはできるだけ、尿意を感じる前には行わず、さらに痛みが強くなる前に行うほうが膀胱にとっては良いことと考えます。

1分間に腎臓が作る尿の生成量は1ccです。 つまり、1時間に膀胱にたまる尿量は約60cc(ヤクルト約1本分)程度です。
排尿回数が増えれば尿量が減るのは自然なことです。 出来るだけ膀胱のことを考えて酷使しないようにしてください。

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尿の管に異常はありません

間質性膀胱炎は男性、女性関係なく殆どの方が尿が出にくいと言います。 それで時々尿道の切開や前立腺の手術を受けられている患者さんがいらっしゃいます。
しかしこれらの手術では、尿が出にくい症状は治りません。

間質性膀胱炎は尿道という管が狭くなるわけでなく、膀胱というタンクに問題があるために発症するものなのです。
タンクにたくさん尿をためられないことと、タンクを収縮する力がないのです。
安易に手術を受けることなどないよう、お気をつけください。

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食事について

間質性膀胱炎の患者さんは、食べ物や飲み物について非常に詳しい方が多いです。
またこの病気は制限食品が多いため、それだけでも大きなストレスになりかねません。

そもそも食べ物が痛みの原因となる理由は、膀胱粘膜が尿と膀胱の境界としての役割を果たせないほど弱くなり、尿に溶けた食品の代謝産物が膀胱壁内に侵入してしまい、神経に触れて痛みを引き起こすためであると考えられます。

粘膜の強度は日1日と変化していますので、人によって日々粘膜の強度は変化しています。 そのような理由から私は
「食品に関して一律には制限せず、痛みを起こす可能性のあるものを知ることが大切です。
その上でバランスよく食事を取れば、尿には大量に痛みの成分が溶け込む心配がないでしょう。
もし痛みが起きた場合は、食べたものを後で振りかえって疑わしい食品を再度試して下さい」
とアドバイスをしています。
症状が良くなってくると何を食べても大丈夫ですが、症状が悪いときには何を食べても悪くなります。

また「食べて胃腸が動き出すだけで膀胱が痛くなる」と来院される患者さんがいます。
食べた直後でまだ膀胱にまだ食品の代謝産物が尿に来ていないのに痛いというのです。
これは食べ物のためではなく胃腸の蠕動運動が筋肉を介して膀胱に伝わるためでないかと思います。

最近の米国の報告を見ますと以前禁止食品といわれたものでも問題なしと言われているようです。
例えばほとんどの肉類、トリ肉類、魚、卵、野菜類、米、パスタ、パン、芋などの炭水化物類、そして梨、ブルーベリーや、そのジュースです。
上記した安全な2つの果物の他にも、メロンやりんご、ブラックベリー、桃、さくらんぼ、カリウムを多量にに含むバナナさえほとんどの患者に安全であるとのことです。
しかし大事なことは各々のIC患者さんは食べ物や飲み物にそれぞれ異なった反応を示すということです。
食べられない事のストレスは痛みを引き起こす原因にもなりますので、もし何かの食品が症状を起こしそうなら、一度に一つの食品を少量でトライすることが重要であるとお伝えしています。

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自分の分身である膀胱が火あぶりの刑とは!

間質性膀胱炎に見られる痛みや頻尿・切迫感・残尿感・違和感などは、今まで患者さんご自身による膀胱の酷使、疲労に耐えてきた膀胱の悲鳴です。
そのかわいそうな膀胱に火あぶりの刑(電気やレーザーによる広範囲の照灼)を、1回ではまだ足りず、これでもかと何回も行うことや、獄門刑(膀胱の一部分を残したほとんどの膀胱や、膀胱全ての摘出)を宣告しては、余りにもむごい仕打ちでないでしょうか?
むしろやさしい気持ちで、膀胱を思いやるべきです。

すなわち膀胱を十分休めてあげることや、膀胱への血流を増やし栄養や酸素をどんどん運んでやることの方がより重要だと考えます。
また適切な運動も血流を増やし、膀胱が働いたために使われたエネルギーの燃えカス(廃棄物、有害な酸化ストレス)を排除してくれます。

間質性膀胱炎の膀胱はこころを映し出す鏡です。
間質性膀胱炎の皆さん、膀胱の様子を聞いて行動してください。

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間質性膀胱炎の病の起源

間質性膀胱炎の病の起源は、はるか10万年も昔に遡るものではないかと日頃思っています。
その頃の人類は狩猟民族で、数日に1日は獲物をとるために10-20kmを集団で歩いたり走ったりしていたそうです。
長距離動いたため、私たちが気がつかないところで筋肉や血管、神経は障害を受けます。 しかしその後の食料がある数日間は、安静状態で修復因子が出て痛んだ組織を治してくれます。
このような生活が、ついこの間まで続いたのです。
ところが最近では歩かなくても乗り物があるため、疲労から組織が障害を受けることがなくなりました。 従って修復因子も出てこなくなるはずです。

また、日中使って疲労した組織は睡眠によって修復されています。
しかし間質性膀胱炎は、昼夜分かたぬ頻尿のため、睡眠が十分ではないために疲労を回復できず、障害が蓄積されてゆくことになります。

歩くことや運動は脳を鍛えると言われています。 すなわちストレスや不安を軽減します。
また脳の血流が増加し、脳の血管や神経を修復します。
運動や休息の不足によって悪化してしまう痛みや頻尿は、薬である程度少なくすることは可能です。
しかし、同時に症状に見合った、適度な運動も欠かさないようにしましょう。

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