■ 朝日新聞の記事について ■



朝日新聞に間質性膀胱炎の患者さんの記事が6回にわたり連載されていました。
 
その記事を読んでの感想です。患者さんは都内在住の80歳代の男性です。
 
いろいろ治療を受けたが結局膀胱を摘出するという手術を東大で受けました。
 
同じ内容を朝日新聞にメールしました。
 
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間質性膀胱炎の治療は、治療の原則からスタートし保存的療法すなわち、膀胱を残すという治療から、最終手段に膀胱摘出を含めた開腹手術があることはこの病気の治療に携わっているものの最低限持っている知識です。
 
すなわち言い換えれば外科的特に開腹手術は最悪、最低の治療ということです。これは世界的な標準的な考え方です。
 
なぜなら、
 
  1. 自分が保存的治療を施したからといって全ての保存的手術をしたとは限らない。この患者さんも記事の限りでは全てやりつくしたとは考えられません。手を尽くしたうえのことです。
  2. 膀胱を取ってしまうと近い将来よい薬が出てきても使う機会がなくなる。世界中で治す研究を行っています。最近の情報ではある方法が出て完全に痛みをコントロールできるとさえ言われています。
  3. 膀胱を取ってしまうとがんばろうという気持ちがなくなる。すなわち希望がなくなるわけです。前向きに生きるということは慢性疼痛の治療で最も基本的な重要なことです。
  4. がんばって治療しているうちに良くなることがよくある病気なのです。私の患者さんで娘さんが家出した後に、痛みで寝たきりとなり、2年半後ひょつこり帰ってきたらすっかり痛みが消えたた方もいます。記事の患者さんは記事によると家族の病気や不幸、米屋という腰に負担がかかるという仕事。これらが解決すれば軽快する可能性があります。
  5. 摘出したところで、痛みが残ることがある。筋痛症で膀胱が痛みの一部分で他にも痛むところがあることが多いのです。
  6. 摘出したところで障害者となり自己導尿が必要であったり、貯尿袋の管理が必要で、完全に直るわけではない。
 
東大でこれ以上保存的な方法がなく、膀胱を取ることしかないといわれれば、何も知らない患者さんは東大の言うことを信ずるでしょう。

新聞を見た多くの医者や患者さんは東大でも摘出するならと、手術を安易に選択するでしょう。安易な選択が広がります。

結果的に摘出することになったとしても、少なくともあえて公にすべきではない恥ずべきことです。現在の間質性膀胱炎の日本の治療は遅れていると思います。


私は沢山のこの病気の患者さんを治療しているが、一人として摘出したことはありません。

医療者も患者も根気よく、時間をかけて症状を軽快することにがんばってゆくと、自然とよくなることが多くあります。

この病気には必ず原因と結果があります。患者さんとじっくり話してゆくうちにだんだんそれが分かってきます。

「ああそういえばあの時・・・」と数年後に言われる方もいます。

痛みの原因が分かれば病気の不安が軽減し痛みも軽減し、コントロールが出来るのです。

この記事を観てある患者さんは、私も将来膀胱を取るようになるのですかと不安を感じ、私に質問してきました。